減災対策で想定する津波の高さ

遅々としながらも、いろいろな方面で震災復興が進められている。
津波。これが今回の震災で最も大きな被害を出した災害だ。(福島原子力発電所の事故の被害はまだ未知数だが。)

津波と聞いて思い浮かぶのが、まだ記憶に新しい、7年前に起きたスマトラ島沖の大地震による津波だ。
マグニチュード9.1という大きな規模の大地震により発生した津波は、インド洋沿岸の諸国を襲い、22万人を超す死者・行方不明者を出した。集落ごと根こそぎ破壊した津波の高さは、50メートル近かったといわれている。
私は被害の最も大きかったインドネシアのバンダ・アチェ市に取材に行ったが、40メートルを超える高さの灯台の先が破壊されており(下の写真)、津波の高さがそれ以上だったことを物語っていた。

スマトラ島沖の震災の後、翌2005年にカイロで会議が開かれ、津波被害からの復興と再建のためのガイドとする原則「カイロ原則」が採択されている。これは、沿岸地域の被災地が、持続可能なまちや文化を取り戻すための土地利用や復興計画に関する指針を示しているものだ。建物のセットバックやグリーンベルトの設置や、高台への移住など、脆弱な沿岸部を「減災」し、災害に強いまちづくりを進めることを原則としている。

東日本大震災は、スマトラ島沖地震に迫る、マグニチュード9.0の規模だった。スマトラで起きたことは日本でも起こりうることだ。海岸線で40メートル以上の津波があると想定して、減災のための土地利用を考えるべきである。
しかし今回の津波は想定15メートルや18メートルと、スマトラよりも低い高さだったと考えられており、今検討されている津波対策は、この高さを基準にして考えられていることが多い。これは大きな間違いだ。それでは想定が甘すぎると言わざるを得ない。40メートルの津波がきて、「想定外でした」とでもいうつもりだろうか。
9月13日に、下記フォーラムで行う講演でも、このあたりの話をしようと考えているが、日本でも、スマトラ沖のときと同程度の40メートルを超える津波がくる可能性は充分あり得ると仮定して、その上で、被害を減らすまちづくりを進めていくことが本当の復興だと思う。


(財)日本生態系協会主催 
国際フォーラム「復興から見える新たな日本の創造‐全国どこでも起こる大災害‐」
9月13日(火)13:00−17:40 津田ホール(東京都渋谷区千駄ヶ谷
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