首都高ビオトープのこだわり

最近ではいろいろな企業ビオトープが存在するようになった。

先日視察と報告会があった、「見沼田んぼ首都高ビオトープ」もその一つである。首都圏の中にあって残存する数少ない自然地域の見沼田んぼに、横断する形で高速道路が建設されたのだが、その桁下と周辺をビオトープにすることを提案し、再生の取り組みが始まった。

このビオトープは、見沼地域を代表する環境である池や湿地が中心だが、他の事業ではなかなか見られない特徴がいくつかある。一つは、2万本以上植樹した苗木がすべて見沼地域のものであること。あらかじめ見沼田んぼ内の林から種子をとり、近隣にある生産農家の方にお願いして発芽、育成をしてもらった。園芸種や国内でも遠い地域から手に入りやすいものを植えてしまうことが多い中、あくまで見沼田んぼという地域の樹木を再生することにこだわり、時間をかけて再生することにした。

さらに、チガヤを中心とした草はらの再生を行っている点。とかく自然再生というと、「樹木」にばかり目が向いてしまうが、遺伝子の多様さからいっても、「野草」も樹木以上に重要なのだ。

ビオトープを再生するときの一番大切なことは、もともとその土地がどんな環境だったか、どんな動植物がいたのかを踏まえて計画や設計を行うことだ。こういう、当たり前のようでいて、なかなかできないこだわりが、首都高ビオトープにはある。

その成果として、昨年「さいたま環境賞」や、土木学会環境賞を受賞したそうであるが、何より、見沼の生きものたちが多くこのビオトープに訪れていることがうれしい。子どもたちや、行政や企業なども次々と視察にきていると聞く。このような当たり前のこだわりを持ったビオトープが増えていくことを期待している。