トキ・コウノトリが舞う世の中に

先日、関東地域の首長・5市長と、国土交通大臣への要望を行った。

要望を行ったのは、「コウノトリ・トキの舞う関東自治体フォーラム」。
トキやコウノトリの野生復帰を通して、自然再生と地域振興の両立した持続可能な社会の実現することを目的として、平成22年に発足し、現在、関東地域の4県にわたる計29市町村の首長が加盟している団体である。

現在、加盟自治体は、それぞれ湿地の再生や、環境に優しい安心安全な農業の推進、コウノトリの野生復帰に向けた飼育計画などを進めている。しかし、各自治体のみの取り組みだけでは限界がある。たとえば、コウノトリは「ツル」と呼ばれている地域があるように、日本最大級の鳥だ。大量の魚などの水生生物を食べ、トキとともに広範囲を移動しながら生活する。市町村を超えた関東エリア全体での取り組みを行う必要がある。
今回の要望は、広域的な自然再生や地域振興について、国土交通省農林水産省環境省文化庁もこの事業を推進する取り組みの事業化を求めるものだった。

実は、野田総理も、9月の参議院代表質問の答弁の中で、この取組を後押しする発言をしている。


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(輿石幹事長の質問に対して)
生物多様性条約COP10で採択された新たな世界目標である愛知目標を達成するため、国内外の取り組みの強化をいたします。
我が国は生物多様性国家戦略を見直し、トキやコウノトリが舞う人と自然の共生する社会の実現を目指します。
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まさに、我々の要望そのものである。

要望には、野田市鴻巣市印西市いすみ市坂東市の5市長が出向いた。私は顧問として関わり、日本生態系協会はその調整役とフォーラムの事務局を担っているため同行した。

この関東にトキやコウノトリが舞う風景というのは、つい百年前ではごく当たり前の風景だったにも関わらず、夢物語となっている。しかしこの風景を再度みることを私はずっと願い続けて活動してきた。トキやコウノトリが生きていけるということは、そこに健全で豊かな生態系があるということになる。
生きものと人が共存するまち。「目指すべき社会」というよりも、「こうならざるを得ない社会」である。生態系と生物の多様性は人の生存基盤だ。これらが持続する社会以外に、私たちが生き延びる道はない。
首長たちの思いが届き、国と自治体が協力してこの日本初の一大プロジェクト事業を進めることができれば、子どもたちに自信を持って手渡せる、「関東地域のあるべき未来」をつくる大きな一歩になるにちがいない。