復旧では悲劇を繰り返す

遅々として進まない感はあるが、政府の震災復興計画が徐々に決まり始めた。
その内容について、見逃せない誤った方針がある。

津波を防ぐ対策として、高さ10数メートルの防潮堤を築く、というものだ。

この件は前にも書いている(減災対策で想定する津波の高さ)。東日本大震災は、スマトラ島沖地震マグニチュード9.1)に迫る、マグニチュード9.0という規模だった。そのスマトラ島沖地震では、海岸線で高さ40メートルを超える津波があったいう事実があるのだ。たった10数メートルの防潮堤で、何が守れるというのだろうか。太平洋の周囲では、チリ沖地震のようにマグニチュード9.5の地震もおきており、当然そうしたことを考慮する必要がある。この防潮堤の後ろに、これまで通りのまちを配するのであれば、また再び、「想定外」という名のもとに、悲劇が繰り返されることになりかねない。

しかも、政府の遅い対応にしびれを切らし、多くの市町村で独自の計画を立てている。一部高台への移転を決断した自治体がある中、ほとんどが震災前と同じまちの復旧を目指している。将来世代にさらに大借金をしてまかなう税金を、コンクリートの山を築くことに使うのではなく、本質的に災害が起きにくい街に再生するための土地利用の再考とその実現、移転を余儀なくされる人たちへの補償に使うべきだ。

進んでしまったら取り返しがつかない。今が本質的な復興の最後のチャンスだ。